ランという植物

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 NHKの『地球・ふしぎ大自然』という番組が好きで、ほとんど毎回欠かさず見ています。
 9/6放送のこの番組で、メキシコの熱帯雨林に生息する「バケツラン」というランを紹介していました。英語ではbacket orchidというのでしょうか。
 実に不思議な生態をもったランで、知能があるのではと思わせるような巧みな技で、厳しい環境の中で生き抜いていました。
 よくランは、「最も進化した植物」といわれます。
 ランには、この地球上で最もあとから現れた植物ゆえの宿命があるのです。
 地上のおよそ植物が生息できる場所という場所は、他の先住植物によって占拠されているわけですから、新参の植物はそれなりの工夫をしなければその世界に入り込めないのです。
 その意味では、地生(地面に生える)ランと着生(他の植物に付着して生える)ランに大別されるランのうち、特に後者の着生ランがより優れているといえます。
 ちなみに前者の代表格としてはシンビジウム、デンドロビウム、後者の代表格はカトレア、ファレノプシス(胡蝶蘭)が有名です。
 着生ランは、自分の居場所として、なんと高い木の枝を選んだのです。これこそ、地上の生存競争の厳しい場所をあえて避けた頭脳プレーなのです。
 カトレアの根は、他の木などにしがみつくための機能と空気中の水分を吸収する機能をもっています。ですから、湿度を含んだ空気があれば、特に水をやらなくても生き続けることができるのです。
 その他、種の保存の面でもかなりの知恵を身につけています。
 たとえばハンマーオーキッドというランは、花弁の中にあるハチの雌の形そっくりの突起をもっていて、雄のハチが交尾しようとその突起につかまると、その突起がハチごとまるでハンマーを振るようにしなってハチの体に花粉をつけるという仕組みになっています。
 前置きが長くなりましたがこの「バケツラン」、香水のような香りで雄のハチを惹きつけます。しかも最も芳香を強く発する部分は下向きになっているのです。ハチはすべって、リップ(ランの花弁で、一番下に位置するもの)とよばれる花弁が変化したバケツ状の器の中に落ちます。この中には、ラン自らが貯めた液体が入っていて、ハチはその中で必死にもがきます。食虫植物のウツボカズラに似ていますが、この液体はハチを溶かしません。ハチにはもう一仕事してもらわなくてはならないのです。
 この容器には一か所だけハチが這い上がる足がかりになる部分があり、そこにハチが辿り着くと、今度は狭い通路があり、そこをやっとの思いでハチが抜け出る時、最も狭い部分にあった花粉がハチの背中に確実に付着するようになっているのです。
 それだけではありません。花粉はアリにも運ばれるのです。花粉はアリの巣まで運ばれるとそこで発芽、発根し、ありの巣を取り囲むように成長します。ありの巣はランの根でしっかりと固定され、ランはアリにより、害虫から守られるという共生の関係を築いているのです。
 ここまで徹底した生き残りの技を身につけたランがいたのには脱帽です。
 明日からのランの世話にもまた興味が湧いてきました。   (写真はファレノプシス=胡蝶蘭)

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