身体の異物排除機能

2025年3月



身体には、体内に有害なもの(異物)が入ってくると、それを無害化したり、排除する仕組みが備わっています。
殺菌や免疫といった機能が前者に該当します。
今回は後者の、異物排除機能について触れてみましょう。
嘔吐や下痢も消化器官の異物排除機能ですが、今回は特に呼吸器に関するものを取り上げてみます。
具体的には、くしゃみや鼻水、咳(せき)、むせ等が挙げられます。
まずはくしゃみについて。
くしゃみには大きく、異物排除と体温上昇という機能があります。
体温の上昇という機能はちょっと意外かもしれませんが、体温を上げることにより熱に弱いウィルス等の活動を抑制し、同時に自身の免疫力を高めます。つまり、免疫機能が奏功しやすい状態を作っているのです。
くしゃみは、鼻腔の粘膜に異物が付着することによって起こります。
その鼻粘膜からの情報を感覚神経が反射中枢に伝え、そこから運動神経を介して呼吸に関わる筋肉(横隔膜や肋間筋等)に興奮が伝わり、強く息を吐き出して異物を体外に排出しようとします。異物排除に関わる筋肉の活動により体温が高められるのです。
次に鼻水について。
鼻腔内では、吸気(吸った空気)を加湿したり、鼻粘膜自体を保護するため、常に粘液が分泌されています(口腔や鼻腔といった、皮膚より弱い粘膜は、必ず粘液で保護されています)。この鼻粘膜に異物が付着すると、鼻粘膜表面の繊毛(細かい刷子)の働きで、鼻腔の奥へ運ばれて、喉から痰(たん)として口から排出されたり、胃に送られて胃酸で殺菌されます。こうして鼻は、きれいな空気を肺に送る機能を維持しているのです。
ところが、鼻粘膜にウイルスなどの病原体や花粉などの異物が付着すると、それを効率よく排出しようとして粘液が多量に分泌され、鼻から出てくることがあります。これが鼻水です。一方で、鼻づまりも身体の防御反応の一つです。これは、異物の付着により自律神経が反応し、鼻粘膜の血管が拡張することにより鼻粘膜が腫れ、空気が通りにくくなった状態です。つまり、異物を含んだ空気を取り込まないようにする入り口対策としての身体の反応なのです。
咳はどうでしょうか。
くしゃみが鼻腔の異物を排出する反応なのに対し、咳はそれより奥の気道(=空気の通り道)、つまり咽頭や気管、気管支に付着した異物を排出する反応です。反応のメカニズムは両者とも似ていて、この部分に異物が付着した情報を感覚神経が反射中枢に伝え、そこから運動神経を介して呼吸に関わる筋肉に興奮が伝わり、強い呼気となるのが咳です。咳には、気道に溜まった痰(たん)を体外へ排出する機能もあります。気管や気管支の粘膜には繊毛とその表面を覆う粘液があり、肺への異物の侵入を防いでいます。この粘液に異物や病原体が混ざったものが痰です。つまり痰も異物排除の一翼を担っているのです。
最後にむせについてですが、これが今回のメインテーマとなります。
気道は、鼻腔から咽頭、喉頭、声門、気管、気管支を通り肺につながっています。消化器官は口から咽頭、食道を通って胃へとつながっています。問題は、咽頭で両者が交差していることです。(下図)


 健康であれば、食べ物が咽頭に達する時に、反射的(自律的)に喉頭蓋(こうとうがい=気管の入り口にあるふた)が喉頭を閉鎖し、食べ物を食道へスムーズに送り込みます。つまり喉頭蓋は、空気と食べ物の交通整理の役割をしているのです。
 「むせる」とは、この喉頭蓋の交通整理がうまくいかず、食べ物が食道のほうではなく、気管のほうに入ってしまい、それが刺激となって咳が出ることです。(下図)


 食べ物は栄養源ですが気管に入ってしまうとこれは異物であり、詰まって呼吸ができなくなったり(窒息)、肺にまで達すると肺炎を引き起こす(誤嚥性肺炎)恐れがあります。この異物排除のため、勢いよく咳をします。これがむせです。
 ですから、異物を気管内に入れないこと、そしてもし入った時には上手にむせて、これを排出させることが重要です。
 上手にむせるためには、いくつかの条件があります。
 まずは、食べ物が間違って気管内に入ってしまったことを認識する感覚です。
 次に、その感覚を感覚神経から受け取って、的確に処理(判断)し、運動神経を介してむせを起こさせるよう指令を出す中枢です。
 そして、その中枢の指令に従い、実際にむせを起こさせる横隔膜や肋間筋等の筋肉です。
 これらのプロセスの中で、どこかに不具合が生じると、上手にむせて異物排除することができません。
 まずはむせないこと、そして異物が気管に侵入したら上手にむせることです。高齢者でも、むせることができる方は比較的安全なのです。
 繰り返しますが、最も避けたいのは、異物が気管に侵入してもむせが起こらず、気管内に留まったり、あるいは肺に入り込んでしまうことです。

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