改めて補綴について---義歯、ブリッジ、インプラント

2018年4月



 不幸にも歯を失った場合、歯の機能や審美性(見た目)を回復するために、歯科的に行う処置を補綴(ほてつ)と言います。
 代表的な補綴の方法には、大きく分けて義歯とブリッジ、インプラントがあります。
 まず、義歯について説明します。
 一般的な義歯は、有床義歯(床の部分があるため)、あるいは可撤式義歯(ご自身で着脱ができるため)といいます。
 侵襲(歯を削ったり、手術といった自身の身体を傷付ける行為)がほとんど必要ないため、身体に対しては最も優しい方法ともいえます。また、ご自身が慣れるかどうかは別として、ほとんどのケースで適用できます。また、外して清掃や管理ができるというのもこの方法のメリットです。さらに、痩せた口元を床の厚みで膨らませたり、歯の形や傾斜もある程度調整できます。
 また、程度の制約はあるものの、作り直し、あるいはブリッジやインプラントといった他の補綴方法への変更も比較的容易にできます。
 一方で、床の部分の異物感、噛む力を粘膜が負担するための噛みごたえの不足感、クラスプという鈎(かぎ)で残っている歯に支えを求めるため、その歯への負担の増加、クラスプ自体の見た目、義歯を外すことへの抵抗感等のデメリットもあります。
 次に、ブリッジについて。
 現在、少数歯欠損(1、2本歯を失ったケース)では、ブリッジという方法をとることが一般的です。
 ブリッジは、失った部分の前後の歯を削り、その部分を橋脚(土台)として失った部分を橋渡しする方法です。したがって架橋義歯ともいいます。当然、特別な場合を除き、両側に歯があることが前提条件となります。
 この方法では、義歯のような床はなく、また固定式であるため、比較的違和感は少なく、咬合力(噛んだ時にかかる力)は歯に伝わるため、義歯に比べ硬い物まで噛むことができます。
 ただし、歯を削らなければならないこと、また、本来歯を失った部分にかかるはずの咬合力が土台の歯(支台歯といいます)にかかるため、その歯への負担は大きくなります。また、本来わずかに動くべき(生理的動揺といいます)歯同士をつなぐことで、それらの歯はいわば運命共同体となり、一方のトラブルが他方へも影響する場合もあります。
 最後にインプラントについて。
 すでに一般的に知られる方法となりましたが、im=中にと、plant=植え込むを合成した造語で、かつては和約で嵌植(かんしょく)義歯といわれていました。
 この方法は、歯を失った部分の骨の中に人工の歯を植え込む方法です。
 前後の歯を削る必要もなく、床もなく、咬合力も直接骨が負担しますから、硬い物でも噛むことができます。もちろん固定式ですので、外す必要もありません。
 なにか、いいことずくめのように聞こえますが、当然デメリットもあります。
 まず、骨にインプラントを埋め込む手術が必要であること、つまり歯は削らないものの、骨を削るという侵襲が必要であることです。言い換えれば、骨と口腔とを貫通した状態でインプラントが機能するということです。ですから、口腔の細菌等の起炎物質(炎症の原因となるもの)がある限界を超えてインプラントの周囲から歯肉下に侵入すると、炎症が自己免疫力のないインプラントの深部へ一気に進行してしまう恐れがあります。しかも、インプラントには痛みのセンサーがないため、この状況に気付きにくいのです。
 また、インプラントが骨に植え込むため、必要な骨の量がないと適応症にならないか、あるいはそれを整えるためのより大掛かりな手術が必要となります。
 さらに、特に前歯の場合、残った骨の形で植え込む方向がある程度規制されますから、希望するような歯の形態にすることが難しいことも少なくありません。
 そして保険適用外となりますので、治療費も高額となります。

 ちなみに、義歯の「外す」という行為に対しマイナスなイメージが持たれやすいのですが、視点を変えると、外してご自身で確認や管理、清掃ができるということは、大きなメリットともいえます。

 それぞれメリットとデメリットがある方法ですが、ご自身が何を優先するのか、何はしたくないのかをきちんと相談した上で治療法を選択することが大事です。
 そして、もし決めかねる場合には、とりあえずより侵襲が少ない方法を選択することをお勧めします。


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