水がしみる=(象牙質)知覚過敏

2017年8月



 「水がしみる」とはどういう感覚でしょうか。
 冷たいもの(刺激)によって、歯が痛みを感じることを言うようです。

 実は、歯髄(歯の中の神経)の感覚は、痛みを感じる痛覚しかありません。
 つまり、冷たい、熱いを感じる温度感覚はないのです。
 冷たい、熱いといった感覚は、歯肉を含めた口の中の粘膜、口腔粘膜の感覚なのです。
 口の中に冷たいものが入ってきたとき、口腔粘膜は冷たさを感じ、同時に歯は痛みを感じます。これらの感覚が中枢である脳に伝えられ、そこで総合して処理され、「しみる」という不快な感覚として認識されるのです。

 さて、水がしみたときには、まず最初にむし歯を心配すると思いますが、その他に知覚過敏(象牙質知覚過敏)といわれるものがあり、同様の症状を呈します。
 通常では痛みを起さない程度の刺激に対しても痛覚が反応してしまうのです。

 先ほど、歯髄が痛みを感じると言いましたが、より細かく説明すると次のようになります。


 歯の外側は、エナメル質と呼ばれる硬い組織で覆われています。一般的にはここは痛みを感じにくい部分です。その内側の象牙質と呼ばれる部分が痛みに対して特に敏感な部分です。この内側に歯髄(歯の神経)があるのですが、歯髄組織の一番外側の部分、つまり象牙質に接している部分に象牙芽(ぞうげが)細胞と呼ばれる細胞が並んでいます。象牙質は、象牙細管という細いストローを横に並べたような構造をしていて、その中に水分を含んでいます。象牙芽細胞はこの象牙細管の中に神経の突起を出しています。温度変化により、この水分が移動し神経の突起を押したり(圧迫)引っ張ったり(吸引)することで痛みが生じると言われています。
 むし歯やエナメル質が削れたり欠けたり、また歯周病で歯肉が下がったり、あるいは歯肉と歯の間に隙間ができた結果象牙質が露出すると、この水分の移動が起こり、「しみる」ようになるのです。 
 ですから、象牙細管の露出部分を封鎖してこの水分の移動を止めれば、「しみる」という不快症状を抑えることができるのです。
 乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、フッ素等が配合されている歯みがきペーストにはこの効果があります(既出の「歯みがきペースト」の院内だより参照)。
 最近、この知覚過敏を引き起こす原因として注目されているのが,
Tooth Contacting Habit(TCH)=歯列接触癖といわれる、常に上下の歯同士を接触させる習癖です。
 TCHは、顎関節症の一大原因として注目されてきましたが、一方で歯へのダメージとして、歯頸部(歯の立ち上がり部)にエナメル質の崩壊を起こし、結果として象牙質の露出に至ることがあります。
 かみしめや食いしばりと違い、一度に大きな力が加わるわけではありませんが、長時間力がかかるため、例えて言うなら地震の長周期地震動のように、立ち上がり部分の歯頸部に応力が集中します。
 いずれにしても、頑固な知覚過敏には歯科医院での処置が必要となりますが、必ずしも歯を削らずに処置できることも多いので、心配な方はご相談ください。

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