今年5月、歯科機材メーカーの(株)ライオンが面白い調査結果を公表しました。
昨年実施した、日本、アメリカ、スウェーデン3カ国のオーラルケア(歯と口の管理)意識調査の結果です。
これは、15〜69歳の日本人、アメリカ人、スウェーデン人の男女1200人に対しての、インターネットを使ったアンケート調査です。
まず歯科医院を受診する目的ですが、日本は「むし歯治療」が66.6%と最多でしたが、欧米では「歯の健康状態の診断」(アメリカ64.5% スウェーデン70.4%)が最も多いという結果でした。
その他の項目でも、「歯のクリーニング」は日本の21.4%に対し、アメリカ57.7% スウェーデン35.0%と、欧米では歯や口のトラブルを予防するための受診が日本より多い傾向にあることがわかりました。
また、自宅でのオーラルケア(ブラッシング等の歯や口の管理)方法についての質問では、欧米では半数以上が「歯科医師から得た情報を参考にしている」(アメリカ51.3% スウェーデン61.3%)に対し、日本は30.8%にとどまっており、「特にどの情報も参考にしていない(自己流)」の41.3%が最多でした。
一般的な感覚では、医療機関への通院は、痛みや「---ができない」「---の調子が悪い」という、いわゆる主訴がその動機となる場合がほとんどです。
医療では、もともとそういった主訴に対してのcure、つまり治療が中心でした。しかし、治療の対象となる疾病には必ず原因があり(医学の進歩の過程で、まだ原因が解明できないものもあります)、それを取り除かない限り、疾病の再発、悪化が起こりやすくなります。逆に、その原因を作らなければ、疾病を未然に防ぐことができます。これが予防です。
そのことを意識し、日常的に予防に努めている方もいらっしゃいますが、これはどちらかといえば少数派です。
程度の差こそあれ、直接的間接的に疾病を経験し、それが予防を心がける動機になっているというケースが多いのではないでしょうか。
経験によって行動が変容すること---生理学や心理学ではこれを「学習」といいますが(日常的に使われる「学習」という言葉より広い意味で使われます)、特に人間はこの学習能力が優れています。
疾病にかからず健康なことを無病息災といいますが、最近では一病息災という表現が用いられます。
疾病を全く知らない人より、ひとつくらい疾病を抱えているほうが健康に注意して長生きをするという意味ですが、「疾病の経験から学習して予防に努力することがひいては健康につながる」という解釈もできそうです。
さて、最近の青葉歯科では、定期的なチェックのために来院する方は、全体の7割を超えています。
口の中に特に痛みや不都合なことがないのにきちんと定期的にチェックを受ける、そしてそれを健康管理の一環として生活の中に位置づけている---これはすぐれた未来型の健康指向といえるでしょう。
そんな皆さんの努力に報いるよう、私たちも医療人として切磋琢磨していきます。