歯周病とテスト

2013年6月



 当院に歯周病のチェック(メインテナンス)で通院されている方は、ポケット(正しくは歯周ポケット)の深さについては、かなりの情報をお持ちになっていることと思います。
 ポケットの深さを測定しているとき、今回は3mm以下が増えたとか、前回3mmだったところが4mmになったとか、まるで学生時代のテストの結果を知ったときのような表情をされます。
 テストと違うのは、数字が低いほうが好ましいという点です。
 さて、個々の数字の多少に一喜一憂する必要はありませんが、ご自身の歯周病の状態(歯周病の有無や程度、変化)を把握するということは、歯周病を管理する上で、とても大事なことです。

 もちろん、歯周病の状態の指標はポケットの深さだけではありません。
 測定時の出血の有無、動揺度(揺れ方)、歯肉の腫れや硬さ、かむときの違和感の有無といったいろんな項目を総合して評価されなくてはなりません。
 最近では、ポケットの深さより、測定時の出血の有無のほうが歯周病の状態を的確に表しているともいわれています。
 また、冷たい水にしみるかどうかも判断材料の一つになる場合もあります。
 歯周病が悪化した場合、歯と歯肉の境目付近(歯頸部:しけいぶ)の歯肉がゆるみ、歯の根の部分(歯根:しこん)が露出します。歯根の表面は象牙質といって感覚がとても敏感な場所で、この部分に水が直接触れると強烈な痛みを感じる場合があります。象牙質知覚過敏といいますが、歯肉の炎症がなくなると、歯根に歯肉がゴムのパッキンのように密着し、この痛みを感じなくなります。
 ただ、腫れていた歯肉の炎症が消えて結果的に歯肉が下がる場合も歯根が露出し同様の水によるしみを感じる場合もありますから、原因がどちらなのかを見極めることが重要です。

 さらに重要なことは、そのときの状況だけでなく、前回からの変化です。
 ポケットの深さが4mmといっても、前回5mmだったのが4mmになったのか、あるいは3mmから変化なのかで、注意のポイントは全く変わります。やはりこれもテストの結果と似ています。
 前者であれば歯周病は改善していると判断しますが、後者では進行した(炎症がぶり返した)可能性があります。

 以前は健康な歯肉の場合、ポケット(正確にいうと、健康な場合はポケットとは言いませんが)の深さは2mm以内とされていましたが、当院では3mmとしてきました。それは、深さが3mmで他に出血等の症状がない場合、正しいブラッシングで汚れが除去できる深さであり、その場合歯周病の進行もみられないからです。
 そして現在では、歯周病専門医も3mmをボーダーラインとしています。

 歯周病がかなり進行している場合、歯周病の悪化を食い止め、あるいは安定させるためには、かなりの時間が必要となります。
 歯周病は慢性疾患で、生活習慣病です。悪化するにはかなりの時間がかかっているはずです。したがって、これを改善させるにはそれなりの時間が必要であろうということは、想像に難くないでしょう。
 ゴールが遠いと、時に心が折れそうになります。
 私からのアドバイスは、ゴールまでのルートの中に、チェックポイントをいくつか作るということです。
 最初は要注意の場所がたくさんありますが、まず、要注意の場所を少なくすること、あるいはポケットが浅くなる、ブラッシング時の出血が減る等、症状が軽くなるといった軽症化をめざしましょう。
 通院してプラーク(歯垢)や歯石といった歯周病の原因となる汚れを除去することも大事ですが、並行して家庭でのブラッシング時に、そのことを意識してプラークを減らしておくことが肝心です。要注意箇所については、お渡しする用紙に大まかに記載されていますから、家庭でのブラッシング時に参考にしてください。
 少しでも症状が改善すると、その感覚と要領がつかめてきます。これもテストと同じです。

 そして、いつまで通院したらいいかという質問を受けます。
 まず、深いポケットがあったり、またプラークや歯石のつきやすく症状の消えにくい方の場合、1ヶ月に一度くらいの間隔で通院を続けることをお勧めします。
 いつまで?症状が軽くなるまでずっとです。
 その理由は、1年くらい通院を中断するとおわかりになります。明らかに症状が悪化するからです。 
 まず、深いポケットの内部のプラーク等をご自身で除去するのは不可能だからです。そして問題なのは、ポケットの深部にある細菌(嫌気性菌)こそが歯周病に大きくかかわっているのです。放置して細菌が増えることはあっても決して減ることはありません。 
 そして深いポケットはなくても症状が消えない場合、その状態を長期に放置することにより、プラーク(細菌の塊)の量が増え質が変わることにより、さらに症状の悪化が懸念されます。

 次に軽度の歯周病の方の場合、1〜2ヶ月に一回の通院をお勧めします。床屋さんに通う感覚でしょうか。
 これは、歯周病の進行がないかの確認とあらたに歯周病になりそうな部分がないかの確認が目的です。
 そして歯石がわずかについたりする以外,特に問題がない方の場合、3ヶ月から6ヶ月、あるいは1年に一度くらいのチェックをお勧めしています。
 時々テストがあると、気づかなかった弱点に気づくものです。
 弱点の克服---これはとても大切なことです。

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