医療にまつわるトリビア

2013年1月



 年の始めということで、今回は医療にまつわるトリビアをご紹介します.
 実は院長の私は、自称語源研究家、語源を調べるのが趣味なのです.
(医院のブログでコメントしています http://aoba-dc.jp/blog/about-this-blog/
 さて、最近の40歳代より若い世代では、「醫」の字を読めない方も多いのではないでしょうか.現在の「医」の旧字ですが、現在の「医」の字はこの旧字の左上の部分だけを残したものである.
 こういう省略の仕方は感じの世界ではよくあって、例えば「1ヶ月」の「ケ」は、「箇」の竹かんむりのそれも左側だけ使ったものです.
 さて「醫」は見ての通り、「医」「殳」「酉」から成っています.
 現在残っている「医」は、主として医療技術を表しています.
 右上の「殳」は、奉仕の精神を表現しています.行人偏をつけると「役」という字になることから理解できますね.
 そして下の「酉」は、癒しの心を指しています.さんずいをつけると「酒」になります。酒は気付けに使われたし、痛みを和らげる効果もありました、
 ちなみに、キリスト教の世界でも修道院でワインやビールが造られていました.
 これは、キリストは最後の晩餐で、「ワインは私の血であり、パンは私の肉体である。」と言ったことに由来するそうです。神の子キリストの血や肉を造ることであり、ビールも原料は麦なので液体のパンと考えれば問題なしとされています.やや我田引水に聞こえるのは私だけでしょうか.
 実際には、これらは修道院にとって貴重な収入源だったようです.
 ウィスキーも「命の水」を意味するアイルランド語のuisce beatha(イシュケ・バーハ)に由来しますが、奇しくもこれも15世紀修道士によって造られていたそうです.
閑話休題.
 要は、医療とは治療技術のみならず、奉仕と癒しの心が伴わないと成り立たないという貴重な教訓をこの語源は示しているのです.意味深淵ですね.私も肝に銘じたいと思います.  

内科と外科
 内科治療とは、主に薬の投与による治療法を指し、外科治療とは、手術手技による治療法をさします。
 「外科」は、英語では”Surgery”で、語源はラテン語の”Chirurgia”から派生しているのですが、これらには“外”の意味はまったくなく、”手仕事”,“手動操作”を意味しているようです。
 なぜ[内]と「外」なのでしょうか。 薬によってからだの内側から治療するのが「内科」で、メスで体の外側から治療するのが「外科」といえばまあ何となく理解はできるのですが.
 詳しくは、中国古来から言われていた“外治法”が、その「外」という語が付く始まりのようです(内科的治療法を“内治法”といいます)。これは、医書の残されていない古代から行われていた、素朴な傷の手当て・止血・皮膚疾患切開治療・灸治療(やけどの痛みが、別の疾病の痛みを和らげるという経験よりあみ出された)・按摩といった体の外表をケアーする方法を指しています。(外科のホームページ参照)
 でもそれなら、内外を「ないがい」と読みますから、外科を「がいか」と読めばよさそうですが、
これは慣用的に呉音が残っているからだそうです。

 でも、日本人としては「げ」より「がい」のほうがきれいな響きに聞こえるのですが.
((呉音=ごおん とは、日本漢字音(音読み)の一つ。奈良時代に遣隋使や留学僧が長安から漢音を学び持ち帰る以前にすでに日本に定着していた漢字音をいう。漢音同様、中国語の中古音の特徴を伝えている。-Wikipediaより))

 ちなみに床屋さんの店頭にある赤・白・青のサインポールは、世界共通のデザインとか.
 この起源も諸説紛々あるようです.12世紀のヨーロッパで、当時の理容師が外科医を兼ねていた(「床屋外科」と称した)ため、赤は動脈、青は静脈、そして白は包帯を表しているという説が有力です。しかし、血管に動脈と静脈の2種類があることが発見されたのは17世紀のことで、12世紀に血管を赤と青で分けて表示したということは、歴史上考えられないという指摘もあります。
 もっともっと調べたくなりますね.

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