50歳以上の方はご存知でしょうか、かつてブラッシングの主流は「ローリング法」でした。
これは、ブラシを持った手首を、ちょうどドライバーを使うように回転させて、ブラシの毛束の腹の部分を歯肉から歯に向かって回転させながら行うブラッシング法です.ローリング法で使う歯ブラシの柄は、回転させやすいように断面が丸かったのです.そしてこの方法では毛束に「コシ」が必要なため、やや固めのナイロン素材が使われていました。
現在この方法でブラッシングしている方は少ないかと思います。歯肉のマッサージ効果は期待できますが、肝心の歯と歯肉の境目や歯と歯の接触部付近といった狭い部分には届きにくいという重大な欠点がありました。
以前にも触れましたが、青葉歯科では、小児や極端に歯肉の炎症が強い方以外には、システマと毛束の小さなワンタフトブラシを中心にブラッシング指導を行っています。
この歯ブラシの原型ができたのは平成元年頃で、その最大の特徴はとにかく毛先が細いことです。この加工は当時画期的で、最初実物を見たときは、文字通り、目から鱗が落ちた感覚でした.
それまでは、歯ブラシの毛は細い円柱状というのが常識だったからです。
ちなみに普通のハブラシの毛の直径は約0.3mmですが、超極細のデンターシステマの毛先は、わずか約0.02mmです。
ですから、先に触れた歯と歯肉の境目や歯と歯の接触部付近といった狭い部分に届きやすいのが特徴です.
ただし、この歯ブラシの効果を十分生かすには注意すべき点があります.
まず、ストローク(ブラシを動かす幅)を大きくしないことです。
ストロークが大きいと歯や歯肉が受ける刺激が大きいため、ブラッシングが十分できたと錯覚しやすくなります.しかし、肝心な狭く凹んだ場所を毛先が素通りし届いていない場合が多いのです.
また、ストロークが大きいと、毛先が細いことにより歯と歯の間の歯肉を傷つけやすくなります.
そこで当院では、歯を1本ずつブラッシングする感覚で、5mm〜1cmの小さなストロークで動かし、移動していく方法をお勧めしています.
ストロークを小さくするコツは、テーブルにひじをつくか、あるいは使わないほうの手でひじを固定することです.すると、ブラシの柄を手のひら全体で握るとブラシをうまく動かすことができなくなります.
そこで、ブラシの柄は親指と人差し指、中指(場合によっては薬指)の指先で、ちょうど小筆を持つような感覚で持ちます.
この持ち方で、ブラシと指のなす角度を変えたり、ブラシの向きを変えることで(ブラシを持った手と同じ側をブラッシングする場合、ブラシの柄の向きを180度倒すと楽です)、口の中のほとんどの部分にブラシが届くはずです.
さて、このブラシの欠点をもう一つ。
それは、毛先が細い分「コシ」が弱く毛先が開きやすいことです.
それも、毛束全体が開くのではなく、毛先がくるっと外側に翻転するように広がります.こうなると、ブラシの清掃機能は極端に低下します.
ちなみに私の場合、3週間ほどで新しいものと交換します.
ちょっと不経済のようですが、これで口の中の健康が維持できれば決して高くはないと思いますが、いかがでしょう。