歯科治療では、処置した後に以前より痛みが出ることが時々あります。
例えばむし歯の治療では、処置後に水やお湯がしみたり、ズキンズキンと痛んだりすることがあります。
深いむし歯の場合、むし歯で軟らかくなった部分を除去した後、神経を保護したり刺激を和らげたる目的で覆罩(ふくとう)材という薬剤を使います。
でも、むし歯の除去に伴う刺激や、ある意味で真綿の役目をしていたむし歯の組織の除去により、刺激に対する感受性が高まることがあるのです。
この症状は一時的なこともありますが、徐々に強くなる場合もあり、またしばらく消えていた痛みが突然出てくることもあります。その場合は神経を取ることも考えなくてはなりません。
もちろん、はじめから神経を取ってしまえばこういったことは起こりませんが、やはりできれば神経は残したいものです。
また一方で、神経を取ったあとに痛みが出ることもあります。この場合の痛みははじめの痛みとは質が異なり、温度変化に対する痛みより、物をかんだときやたたいたときの痛みが主になります。これは痛みを感じる神経が異なるためで、前者が歯の中の神経、後者が歯の周囲の神経によるものなのです。
よく、「神経を取ったのにどうして痛いのか?」と不審に思われるかもしれませんが、それはこのためなのです。わかりやすく、「神経を取った歯でも その歯を抜けば痛いですよね」と説明しています。
また、痛みのない大きなむし歯や神経の再治療をすると、痛みや腫れが出ることがあります。歯を残すためには絶対に必要な治療なのですが、これも「なぜ痛みが出るのか」と不安に思うことでしょう。
感染根管治療といいますが、感覚の消失した、細菌で汚染された神経組織を除去するのがこの治療の目的ですが、細心の注意をはらっても、多少なりとも根の外の組織に刺激を加え、ときに炎症を引き起こしてしまうのです。これを「慢性炎症の急性化」といいますが、簡単に表現すると、「眠っていた炎症を起こしてしまった」といったところでしょうか。
その他、歯石を除去した場合にも、以前より水がしみるようになることがあります。これは、これまで歯石に覆われていた面が露出したり、多少なりとも歯の面を器具で刺激してしまうことによります。
痛み、特に歯の痛みは厄介で耐えがたいものです。
痛みを取り除くのも歯科医の重要な仕事ですが、時に処置によりかえって痛みが出ることは、歯科医にとっても悩みの種です。
痛みがなければ、歯科医院への通院はずいぶん気が楽になりますよね。
痛み止めを飲んでも鎮痛効果が短い場合は、処置をしたほうが痛みが和らぐことが多いものです。
痛みが耐えがたい場合、不安な場合は、歯科医にご相談ください。
これだけは言えます。
「痛みは必ず和らぐ」
|