当院では数年前より、オゾンを利用した殺菌システムを導入しています。
ひとつは、診療室に設置してあるオゾン殺菌脱臭装置です。
歯や材料を削ることが多い歯科の診療室内は、何の対策も講じなければ、微細な汚染物質や細菌が空気中に多数飛散し、呼吸器から飛沫感染を起こす可能性があります。
一般的には、歯の切削時に水といっしょに切削片を吸引する(口腔内)バキュームが利用されます。
当院ではその他に、15年前から口腔外バキュームといって、口のすぐ外に設置して口の外に飛び散る切削片を吸引するようにしています。ゾウの鼻のような形で、「ゴーッ」というすごい音のするあの装置です。正直うるさいのですが、それだけ吸引力が強いという証拠でもあります。
そしてさらに、数年前に導入したのが、オゾン殺菌脱臭装置です。
診療室全体の空気を吸引循環して、口腔外バキュームでも吸引しきれなかった微細な汚染物質や細菌を浄化殺菌する装置です。機械がやや大きいのが難点ですが、音が静かで、これにより診療室はかなりきれいな環境に保たれているはずです。来院される方にももちろんですが、毎日診療室で仕事をしているスタッフや私にとっても心強い味方です。
もうひとつがオゾン水生成装置です。
手洗い用に1ppmのものを、そして局所の殺菌用に4ppmのものを1年前から導入しています。
オゾン水は高濃度では毒性がありますが、このくらいの低濃度のものでは高い殺菌作用を示します。
オゾンは自然大気中に存在しており、酸素原子からできています。オゾンは不安定で、すぐに酸素分子になろうとしますが、これがオゾンの強い酸化力で、分解反応後にすぐに酸素分子になります。ちなみにオゾン水はただの水になります。したがって他の消毒剤や殺菌剤と異なり残留性が全くないので安全かつ二次公害の心配はありません。
データ上では、1ppmのオゾン水で10秒洗浄すれば、ほとんどの細菌は死滅します。この殺菌作用は、オゾンの酸化作用により、細胞膜、そしてその内部にある酵素を破壊することによるものです。ではウィルスはどうかというと、ウィルスには細胞膜自体がありませんから、さらに効果は高いと考えられます。例えば肝炎ウィルスやエイズウィルス、ノロウィルスなどにも当然有効です。
既に述べたように、1ppmで十分な効果があるのですが、脂肪やタンパク質があると効果が薄れること、そして唾液や水分により希釈されるであろうことを考慮し、歯周ポケットの洗浄には、4ppmのオゾン水を利用しています。
欠点は、これほど殺菌作用の強いオゾン水なのに、すぐに水になってしまうため、皆さんにお持ち帰りいただけないことです。
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