今年4月から「後期高齢者医療制度」が実施されました。
内容等が国民に周知徹底されておらず、いまだに医療機関の窓口での混乱が絶えません。
この制度では、後期高齢者(75歳以上)はこれまで加入していた国保や健保から脱退させられ、後期高齢者だけの独立保険に組み入れられました。
これまでの制度との大きな違いは、家族に扶養されている人を含めすべての後期高齢者が保険料の負担を求められ、大多数が年金からの天引きで保険料を徴収されるようになることです(「天引き」の対象は年金が月1万5000円以上)。与党の賛成多数でこの制度が成立した以上、本人の意思とは無関係に徴収されます。
保険料額は、条例で都道府県ごとに決まっていますが、全国平均で年7万2000円(月6000円)程度といわれています。介護保険料(全国平均4090円)とあわせると、多くの高齢者が、毎月1万円を「天引き」されるのです。
従来、75歳以上の高齢者は、障害者や被爆者などと同じく、“保険料を滞納しても、保険証を取り上げてはならない”とされてきましたが、今回の制度「改悪」により、滞納者は保険証を取り上げられ、短期保険証・資格証明書を発行されることになりました。また、保険料は2年ごとに改定されますが、後期高齢者の数が増えるのに応じて、自動的に保険料が引きあがる仕組みもつくられています。
後期高齢者医療制度になっても、医療費の窓口負担は、「原則=1割」「現役並み所得者=3割」で変わりません。ただし政府は、後期高齢者とそれ以下の世代で、病院・診療所に払われる診療報酬(医療の値段)を別建てにし、格差をつけようとしています。
これにより、後期高齢者に手厚い医療をする病院・診療所ほど経営が悪化するようになり、高齢者は、“粗悪医療”や“病院追い出し”をせまられることになります。
このように、「後期高齢者医療制度」は75歳以上の高齢者を他の医療保険から切り離すことで、「保険料値上げ」か「医療内容の制限」かという、どちらをとっても痛みしかない“選択”を高齢者自身にせまろうというものです。
後期高齢者医療制度は、首相の一言から長寿医療制度などと耳障りのよい言葉でごまかそうとしていますが、要は医療費抑制がその根底にあるのです。
国民が真に健康になり医療費が押さえられるのならそれはすばらしいことですが、この制度の仕組みを見る限り、医療費が増えたら高齢者自身の負担を増やすか、医療内容を制限しようとしていることは明らかです。
高齢化社会になれば、ある程度までは医療費は増えるものです。これを強引に押さえ込もうとすれば、後に必ずそのつけはより大きなものとなってのしかかってくるでしょう。
道路特定財源しかり、官僚の天下り先しかり、まだまだ率先して見直さなければならない無駄は多いように思います。
高齢化がいけないことでしょうか。
医療費が増えることがいけないことでしょうか。
元気な高齢者が産業に参加できる仕組みを作ればいいし、医療を産業の一分野としてとらえ、内需の活性化に生かすといった、前向きな発想をして、誰もの行く末にもっと明るいビジョンを示してほしいものです。
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