最近の歯科診療における制限 - 医療は一体どこへ 08.1月




 06年4月の診療報酬改定で、歯科の保険診療体系が大きく変わったことは、すでにさきの院内だよりの紙面で触れました。
 繰り返しになりますが、むし歯や歯周病の改善のための指導をしても、文書を渡さなければ指導料を算定することができなくなりました。文書をまとめるのに、かなりの時間お待たせしているのを痛感している方も多いかと思います。そして管理の段階に入ると多くの場合、実際の処置はほとんど評価されなくなってしまいました。
 青葉歯科では、1ヶ月から3ヶ月毎に歯周病の管理のためにきちんと定期検診に通院されている方が、患者さん全体の6〜7割を占めています。この数字は、いかに皆さんが健康への意識が高いかを物語っていますし、そんなふうにして皆さんと関われることをスタッフ一同、誇りに思っています。
 その一方で、皆さん信じられないかもしれませんが、その際に歯科衛生士が歯石や歯垢を除去したり、私がポケット内の殺菌や洗浄を行ないますが、この処置には全く点数がないのです。
 私たちが信念をもって行なっていることが正当に評価されないのは実に残念ですが、評価がどうであれ、当院ではこれらの処置は必要不可欠なものとして、今後とも行なっていく所存です。
 また以前から、クラウンやブリッジといったかぶせ物は、2年間は歯科医院の責任で保証しなくてはならないし、義歯は半年間は作り直しができないことになっています。
 揺れが残る歯同士を連結して残そうとすれば、リスクは当然高くなります。だからといってリスクを回避してきっぱり抜歯することがはたして患者さん本人にとって幸せなことか、大いに疑問が残ります。
 しかし最近の日本の医療政策は、リスクを医療機関に転嫁してこのような「切り捨て医療」を押し進めようとしているのです。
「しっかりしていない歯を残すのは、どうぞ歯科医師の裁量で行なって下さい。ただし、その後抜歯になって歯を入れる場合には国の保険は使えませんから、全て歯科医師の持ち出しで行なって下さい」
こう言わんばかりの制度なのです。
 8020運動(80歳で20本の歯を残そう)は国が掲げたスローガンですが、その国が実際にはこのような保険制度を運営しているのですから、詭弁もいいところです。
 かつては日本の医療は基本的に出来高払い制(処置ごとに点数?評価、つまり料金とお考えくださいーが決められている)が中心でしたが、最近は慢性疾患を中心に包括制への移行が押し進められています。
 包括制とは、ある疾患に対する一連の処置の点数全体を一定額に設定し、たとえそれ以外に必要な処置をしても、それに伴う点数は一切請求できないシステムです。
 出来高払い制にも欠点はあり、医師が収入を増やそうと思えば、不要な処置は投薬が増える傾向があります。しかしこれは医師としての倫理観の問題であり、そのようなことはどんな制度にも言えることではないでしょうか。また、この欠点を補うためには、処置等に一定に制限制約を設ければ解決できるではないでしょうか。
 逆に包括制は、国が医療費を抑えるには実に都合がよく、総枠を決めてしまえばいいのです。この場合、一時的には医療費は下げられますが、一方で必要な処置が行なわれなくなる危険性もあります。
 さらにこれに、窓口での患者負担を引き上げれば、医療費抑制効果は絶大です。現在の日本の医療政策がまさにこれです。
 しかし長期的にみると、治療の遅れ、不十分な治療による疾病の長期化や重篤化が起こり、さらに医療費が増大したり、平均寿命の低下が危惧されます。
 「医療費を上げるなら増税しかない」これはいつも国が使う常套句です。
 本当に医療費が上げられないのでしょうか。
 健康な生活を保証した憲法第25条は、はたして機能しているのでしょうか。
 2003年の時点で、日本の総医療費の対GDP費は世界で18番目、国民一人当たりの医療費でも14番目で、現在はさらに下がっているはずです。
 つまり、こんなに働いているのに国民の健康がないがしろにされているのです。
 医療費が少ないのは、日本が健康ということでしょうか。
 税金のムダ使いはないでしょうか。
 皆で考え、税金を有効に使いましょう。
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