そうだったのか、口腔機能 2007年7月





 皆さんはこの図を見たことがありますか。
 左右とも、内側は大脳を輪切りにした図です。
 左は感覚の中枢として、右は運動の中枢としての大脳皮質の領域区分を示したもの、言い換えれば、左は大脳皮質のどの辺で体のどの部分の感覚を認識するのか、また右は大脳皮質のどの辺で体のどの部分を動かしているのかを示したものです。
 これを見ると、概ね体の上下が逆になっているのが興味いところです。
 そして、感覚野運動野とも顔が大きな領域を占めていますが、とりわけ口周辺でその傾向が顕著です。
 これは、口周囲の感覚がとても繊細で、同時に繊細な動きができることを示しています。
 たとえば、ヒトの歯に圧力を加えた時の最小の力(閾値?いきち)は、前歯では約1g、第一大臼歯でも8〜10gとされていますから、前歯は1gの力を感じることができるのです。
 またその他の感覚として、かんだ時に感じる知覚閾値(最小限の厚さ)はきちんと歯がそろっているヒトで約0.02mm(20μ)、さらに二点弁別域(先の鋭い2本の細い棒を同時に当てて、それが異なる2点と感じられる2点間の最小の距離)は、舌の先では約1.1mm(ほほでは約11mm、背中では約68mm)ですから、いかに感覚が鋭いかがおわかりいただけることと思います。
 また、ヒトの味覚は鋭く、例えば魚の姿を見なくても、味覚でその種類を言い当てることができます。
 一方運動においても、舌や唇等の連携プレーで、食物の硬さや大きさを感じながら適切な咀嚼(そしゃく)をしたり様々な発音をすることができます。
 
 口腔の機能は、栄養接収やコミュニケーションといった、人間が生物的社会的に生きていくために不可欠な「道具」であると同時に、食事を楽しんだり、歌を歌ったり、楽しい会話をしたりと、生きる楽しみを作り出す「道具」でもあるのです。
 歯を失うと食べられる食物の種類が制限されたり、疾患や老化により感覚および運動神経が鈍化すると、咀嚼の際に舌やほほをかんだり、口の周囲にご飯粒がついていてもわからなかったり、あるいはろれつが回らなくなったりと、ちょっと寂しい思いもします。
 でも、歯の治療も含めた口腔機能の管理と、機能訓練によって口腔の感覚や運動を高めることが重要です。
 しっかり咀嚼していますか?
 会話を楽しんでいますか?

このページを閉じる

Copyright 2004 Aoba Dental Clinic All Rights Reserved.