技術は変えよう、ポリシーは変えずに


 今回は、私の診療ポリシーを語らせて下さい。
 早いもので、青葉歯科を開業してから今年の11月で18年になります。これまでやってこられたのも、ひとえに患者さんをはじめとして地域の方々のおかげだとつくづく感じています。そしてもちろん、現在の、そしてこれまで私とともに夢を実現しようといっしょにがんばってくれたスタッフがいたからこそ、今があるのだと感謝しています。
 ご存じのように、青葉歯科は大通りから入り込んでいて、しかも時々不親切だとお叱りの言葉をいただくこともありますが、目印になる看板等は一切ありません。そしてお世辞にも目を引く建物ではありません。実は開業当時、国道50号線からの入り口に、青葉歯科にちなんで、そして周囲の田園と調和するようにと緑の看板を立てたことがありましたが、それでもやはり看板は看板、美感を損ねたために撤去してしまいました。
 今では、医院の前に建物と一体になるように目立たない看板が一つ、そして駐車場にそれを示す電照看板のついた街路灯があるだけです。(玄関の横にAOBAのロゴがあるのをご存じでしたか?)でも、私はそれでいいと思っています。
 青葉歯科と信頼関係にある方に対し、いい診療ができ、そして信頼関係をさらに深めることができれば本望です。お互い不信感を持ちながら診療を行うことほど危険なことはありません。診療には不快感や不安感を伴うことがあります。私としても、なるべくそれらを少なくしたいとは思っていますが、治療である以上、やむを得ないことも少なくありません。
 そんな時、患者さんは交感神経が緊張した状態になっていますから、心臓はドキドキ、冷や汗タラタラ、そして血圧はかなり高くなっています。治療の間はこちらに身体をあずけて下さっているわけですから、その上不信感があれば、本当に任せて大丈夫かと気が気ではないでしょう。それこそ貧血やショックを起こさないとは限りません。こちらもそうなっては大変と、治療に集中することができないばかりか、本来の処置に二の足を踏むことさえあります。つまり信頼関係は、治療が成功するための重要なファクターなのです。
 さて、時代とともに、治療技術や傾向、そして医療における患者さんと私たちとの関係もずいぶん変わってきました。
近年「治療より予防」といわれますが、私はまず主訴(一番気になっていること)が解決して、はじめて予防にも関心を持っていただけるようになるのではないかと考えています。そこから予防にシフトできるのではと思います。最近では、当面気になっていることはなくても、検診のために来院される方々がずいぶん多くなってきましたから、皆さんの健康に対する意識がこちらが考えている以上に高くなっているのでしょうね。
 皆さんが青葉歯科にどう変わってほしいのか、また変えてほしくないことは何か、私たちもアンテナを鋭くしながら情報を得、そして対応していきたいと思います。「技術は変えよう、ポリシーは変えずに」これが私のモットーです。

 私も大学卒業後、臨床研修を受け、それが基礎となって現在があります。したがって本来、歯科医として中堅となった今の私の立場からすれば、研修医を受け入れ、育てる義務があるともいえます。しかし、私は心の狭い人間ですから(笑)、すべての患者さんに私が接しないと気がすまないのです。そして、思い上がりかもしれませんが、私を頼って来院された患者さんが、ある日突然見知らぬ若い研修医に診療されたらどんな気がするだろう、そう思うとどうしても研修医の受け入れに踏み切れないのです。
 でも、いずれこの問題は自分なりに解決しなくてはならないでしょうね。その時、私も一つの殻から脱皮できるかもしれません。
 ご静聴、ありがとうございました。

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