最近の学校歯科検診
以前は、学校歯科検診というと、むし歯のチェックをさしていました。最近は、児童のむし歯が減少し、また児童を取り囲む環境が変化したこともあり、他の疾患にも目が向けられるようになりました。項目では、従来の「むし歯(う歯)」の他に、歯肉炎をはじめとする「歯周疾患」、「顎関節や歯列(歯並び)」、そして「その他」に分類して、必要に応じて治療の勧告が行われるようになりました。言い方を変えれば、むし歯以外にも注意をしなくてはならない疾患が増えてきたともいえるでしょう。
今回は、学校歯科検診のとらえ方とその限界についてお話いたします。
まず、歯科医院での検診と根本的に違うのは、限られた設備のもとで、学校の時限にそった限られた時間内に多くの児童を検診しなくてはならないということです。ひとりに5分もかけていれば、300人では1500分、つまり25時間かかることになります。しかも、診療室のような照明機具もありませんから、どうしても見落としたり見間違えることもあります。ですから、むし歯の項目にチェックのついた治療勧告の用紙を持って歯科医院にきたところが、「むし歯はなし」といわれたという事態も生じるわけです。
でも、考え方によっては、用紙がきたおかげで、口の中をチェックしてもらい、異常がないことがわかっただけでもより安心できるでしょうし、万一他の疾患を発見されるということだってありうるのです。そういう意味では決して無駄にはなっていないはずです。
また逆に、児童自身が口の中で気になることがあっても見落とされることもあります。そういう場合には、校医の歯科医にその旨伝えるようにしましょう。
次に、歯並びの治療については、現時点では健康保険の対象外となっています。学校の検診で問題が指摘されたのに、その治療には保険が効かない、ちょっと矛盾していますね。したがって、歯並びに関しては治療勧告ではなく、児童本人や保護者から歯並びについての問い合わせや心配している旨の訴えがあった場合に限って、校医がチェックし必要に応じて記載することになっています。
それから新しく、Co(シーオー)という概念が導入されました。厳密にいえば初期のむし歯ではあるものの、食事やブラッシングを改善することで進行しないかもしれないので、経過をみてみましょう、というものです。
この指摘で、児童本人や家族が、口の中の健康というものに今まで以上に関心が深まれば、さらには健康そのものについてもう一度見直す機会になれば、この概念が導入された趣旨は十分生かされたことになります。
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