健康保険証に対する御理解を


 かつて日本は終身雇用、つまり一度就職した勤務先は定年退職するまで変えないという考えが一般的でした。
この場合には、保険証の変更は定年退職した時、もしくは給与所得者が独立して自営業を営むようになった時に行なわれるのが大半でした。しかしいわゆるバブルの崩壊後、社会構造はそれまでとは大きく変わり、いきおい企業に対する給与所得者の考え方も変わってきました。当然、保険証の変更は先に述べた場合に限らず、日常茶飯事に起こりうるようになりました。不景気のためのやむを得ないリストラ、より自分の能力を発揮できそうな場を求めての職場変更、期限付きの就職のための職場変更等がそれらに当たりますが、以前にくらべて厳しい環境になった反面、より自由な勤務形態がとられるようになってきました。
 さて、ここで問題となるのが保険者である企業の健康保険証の回収と再交付の不徹底と、被保険者の保険証に対する理解不足です。例えば、ある企業を退職してもそのままその保険証で医療機関を受診する場合があります。退職した時点でそれまでの保険証は有効期間が終了し、無効となります。また、なかには退職してもその月末までは有効であると思い込んでいる場合もあります。もちろん、無効であることを承知の上でそれまでの保険証を提示するという悪質な例もあります。
 こういったことが起こる最大の原因は、企業が就職時に保険証を公布し、退職時に回収するという手続きを怠っているためです。企業には、この手続きの徹底をぜひともお願いしたいところです。また被保険者の方々には、保険証はいわば金券であるという理解をしてほしいと思います。無効となった保険証で受診することは、厳しい言い方をすれば不法行為なのです。 無効の保険証で受診した場合には、後々必ず無効の通知が医療機関に届き、その場合にはその保険証で受診したときの医療費の10割(3割負担であれば残りの7割)の支払いが求められます。期限の切れた電車の定期券で乗車するということには、ほとんどに人が抵抗を感じるはずですが、どうも保険証に関してはこの意識が低いように思えます。
 保険証が更新された場合、その月のうちに提示していただけるといいのですが、月が変わると、医療機関にとっては、支払い側にすでに診療明細書(レセプト)を提出しているため、とても厄介なことになります。医療機関とそれを利用する側双方で気持ちよく診療が行なわれるように、健康保険証に対する御理解と御協力をよろしくお願いいたします。
00. 11

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