ストレスと免疫力

冬を迎えたいま、例年のインフルとともに、新型コロナウィルス感染の第3波とみられる拡大が告げられています。

 私たちは、見えない敵に対し、いまだ確実な対処法が見出せないでいます。

 とかく、三密の回避やマスク着用、手洗いといったいわゆる対外的な対処法に関心が向きますが、同じ条件のもとでも、感染する人としない人がいることも事実です。

 まずは原点に立ち返り、自分自身の対処法にも向き合う必要がありそうです。

 これは対コロナのみならず、細菌やウィルス等あらゆる外敵に対しての感染防御と症状の悪化軽減に役立つはずです。

 自身の対処法、つまり免疫力をつけることです。

 以前にも触れましたが、私たちの日常の体調は自律神経によってコントロールされています。自律神経は交感神経と副交感神経からなり、大雑把に言えば、臓器に対し相互が促進と抑制という拮抗作用(反対の働き)でコントロールしています。どちらかと言えば、交感神経が活動に適した作用をし、副交感神経が体を休めたりエネルギーを貯蓄しようとする作用をします。

 別の表現では、交感神経は脳を活発に働かせる作用もしますが、同時にストレスに対処するときにも働きます。

 逆に、副交感神経は主にリラックスさせたり、睡眠時に作用します。

 ここで注目したいのは、交感神経を過度に興奮させるストレスという刺激です。

 働きすぎ、悩みすぎといった「心身の疲れ」などで、心と体にストレスがかかると、自律神経が乱れて交感神経が過度に興奮します(ちなみに性格的にイライラしたりせっかちな人も交感神経の働きが強い傾向があり、病気になりやすいと言われています)。

 その際、交感神経からアドレナリン(というホルモン)が分泌されることで、白血球の一種である顆粒球が増加します。 

 顆粒球は細菌を処理する力が強く、自らが発生させた活性酸素によってそれを殺します。細菌を処理した後は膿(化膿性炎症)を作ります。増加した顆粒球は、役割を終えるときに活性酸素を放出しますが、この活性酸素は広範囲で組織破壊を起こします。そしてそれと共に、血管が収縮して血行も滞ります。

 その結果、細胞の老化、血行障害などが起こり、がん、心臓病、高血圧、便秘、不眠等、さまざまな疾患が発生しやすくなります。

 また、顆粒球はサイトカイン(免疫細胞間の情報伝達物質)を産生し、これが過剰に産生された場合には組織を障害したり、免疫細胞であるリンパ球の働きを抑制すると言われています。

 ここで、自然免疫と獲得免疫について簡単に触れておきます。

 自然免疫は、外敵が侵入した際、敵が何であれ、まず真っ先に出てきて貪食作用(相手を取り込んで分解処理する)を行いますが、白血球の一種の顆粒球はその代表です。

 一方の獲得免疫は、一度体内に侵入した敵の情報を確認し、その情報から作った抗体で攻撃します。これらの働きをするのが同じく白血球の一種であるリンパ球です。

 リンパ球は、細菌よりもさらに小さい異物を処理するように進化した白血球で、接着分子(接着タンパク)に小さい異物を吸着させて認識します。

 小さな異物とは、ウィルスや消化酵素で分断された他の動物や植物のタンパク質などです。はしかウィルスや卵白などに免疫ができるのはこのためです。

 その代わり、リンパ球は細菌に対しての免疫作用はあまり機能しません。細菌で起こる病気は顆粒球が処理するため、リンパ球の誘導が起こりにくく免疫(狭義の免疫)ができにくいのです。

 自律神経の支配分野(どの機能をコントロールしているかということ)では、顆粒球は交感神経の支配を受け、リンパ球は副交感神経の支配を受けています。

 つまり、ストレスが多く交感神経の興奮が高まった状態が続くとリンパ球の働きが弱くなり、ウィルス感染に対する抵抗力が弱まるというわけです。

 換言すれば、副交感神経の支配をやや高めておくことが、ウィルス感染の予防につながるのです。

 この実践について、財団法人 脳神経疾患研究所 総合南東北病院発行の「健康倶楽部」の記事をご紹介します。

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(1)ストレスの多い人は、副交感神経を刺激して優位に保っておく  

 副交感神経とは、夜や休息時に働く神経、血管を広げ血流を促し、心身をリラックス状態にする働きがあります。緊張したり、興奮したりすると交感神経が優位になり心臓の拍動を高め、血圧を上昇させます。通常はこの二つの神経がバランスを取っているのですが、ストレスや過労などで自律神経が乱れると白血球にも悪影響が及ぶのです。ですから、やや副交感神経を優位に保っておくことが免疫力アップにはよいと考えられています。            

 副交感神経を優位にするには、             

A)適度な運動をする

B)深呼吸をする

C)食事をゆっくりよく噛んで食べる

D)ぬるめのお風呂につかり体をあたため血流を良くする  

 副交感神経が優位になると、リンパ球が増えて免疫力が向上します。ただし、増えすぎは免疫過剰で問題です。とはいえ、現代のストレス社会は交感神経が優位になりやすく、免疫力の低下につながっていると考えられます。

(2)免疫力を高める食品をとる  

 免疫力を高める食品といわれているのが、食物繊維が多い食品、抗酸化食品です。腸内の環境がよいと免疫力がアップすることは明らかになっています。腸は病原菌などが腸壁から侵入するのを防ぐ免疫細胞が多く集まっているので腸内の善玉菌を優位にするために食物繊維の多い食品や、ヨーグルトなどの発酵食品を積極的にとることです。 

  *積極的にとりたい食品   玄米・野菜・きのこ類・バナナ・緑茶・ココア・りんご・ヨーグルト・納豆など  

(3)ストレス過剰にならない

 現代社会において、ストレスはつきものです。そのストレスをうまく発散させること、といってもそれが簡単にできれば言うことないのですが、ストレスが強いと、交感神経が優位になるので、免疫力が弱まると考えて下さい。副交感神経を優位にさせるとストレスが弱まり、免疫力がUPすると考えれば良いわけです。      

 仕事などで疲れたら、無理をせずに十分休養すること。無理をして疲労を回復させずにいると、当然免疫力が弱まり、病気に抵抗できない体になってしまいます。  

 毎日の生活の中でリラックスできる時間をとることです。リラックスの時間に笑いがあれば最高です。  「笑う」ことは副交感神経に支配されているので、「笑い」のある生活が免疫力を高めることになるのです。 

(院内だより「あおば」No.201)