ステロイドとは

2017年12月



 患者さんから、
「口内炎ができたので、ステロイドを出してください。」
と言われることがよくあります。
 確かに、痛みを和らげるにはステロイドの軟膏はよく効きます。
 一般的に、「よく効く薬は副作用も強い」という傾向があります。

 ステロイドとは、ある特有な化学構造をした化合物の総称で、たくさんの種類があります。その中で、体内で作られてホルモンとして機能するものを「ステロイドホルモン」と言います。
 ここで、ホルモンについて少し触れておきます。
 ホルモンとは、いわば体内の情報伝達物質です。内分泌器官から血液中に分泌され、ある特定の器官(細かく言えば器官を構成している細胞)に情報を伝達し、その器官特有の働きをコントロールします。
 ステロイドホルモンには、男性ホルモン、女性ホルモン、そして副腎皮質ホルモンがありますが、私たちが一般的にステロイドという場合、副腎皮質ホルモンを指します。
 話がまた細かくなりますが、副腎皮質ホルモンは化学的にはコルチコイドと呼ばれています。このコルチコイドには、グルコ(糖質)コルチコイドとミネラル(鉱質)コルチコイドがあり、前者が糖質に、後者がミネラル(ナトリウムやカリウムなど)に作用します。
 この中のグルココルチコイドは糖質のコントロール以外にも様々な働きをします。その作用の一つとして、グルココルチコイドの中に含まれるコルチゾール(あるいはコーチゾール)による抗炎症作用があります。この作用をする薬をステロイド薬と言います。
 この薬は炎症を抑えますから、炎症に伴う痛みや痒み、脹れといった不快な症状を軽くしてくれます。
 ただ、ここで炎症とは何かを知っておかなければなりません。
 炎症とは、外傷や細菌などの侵入、薬物や放射線などの作用に対し、生体が自身を守るための免疫反応、つまり自己防衛反応なのです。
 たとえば、細菌が侵入した場合、白血球やリンパ球、マクロファージ等の免疫細胞がその侵入を感知し、免疫に関わる仲間を集め、細菌と戦ったり、細胞を修復したります。
 抗炎症とは、この細菌の感知の能力を抑えることになりますから、ステロイド薬は、炎症を抑える画期的な薬である反面、自身の免疫能力も低下させてしまうのです。
 その他ステロイド薬には、コルチゾールの作用を持続させるために、体内で分解されてコルチゾールを作り出すホルモンも含まれているのです。
 これらのホルモンが、体内で正常に活動している細胞にまで不要な作用をしてしまう危険性があります。
 また、ステロイドを長期に服用すると、本来分泌されるはずの副腎皮質ホルモンの分泌を自身が不要と認識し、低下してしまう恐れもあります。
 このように、ステロイド薬は即効性のある薬である反面、副作用もあります。
 ですから、ステロイド薬は軽症の場合にはむやみに使用しないことが肝要です。
 ただ、口内炎等の症状が重く、食事が思うようにできないため体の抵抗力が低下するような場合は、用量用法を守って適切に使用することは有効です。

 昨今、薬の過剰投与が問題となっています。
 抗生物質も必要以上に使用すると耐性菌を作る原因となります。
 薬を服用する側も、薬が疾病を治すのではなく、薬はあくまで自身が疾病を治そうとするのを補助するものだという認識が必要です。

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