歯がしみる

2015年6月



 水を口に含んだとたん歯がツーンとしみる---こんな経験をしたことがある方、多いと思います。これ、とても不快ですよね。
 実は歯の神経(歯髄:しずい)は、痛覚、つまり痛みを感じるだけで、温度を感じることはできません。ちょっと意外ですね。
 「歯がしみる」という表現には、痛みと温度の感覚とが渾然一体となったような意味合いがありますが、厳密にいうと、「温度が原因となってそれを歯髄が痛みとして感じる」というのが正確かもしれません。
 水の冷たさを感じるのは、口の中の表面、つまり粘膜に無数にある温度の感覚器によるものなのです。
 歯の痛覚と粘膜の温度感覚とが一緒になって、「歯がしみる」という独特の不快な感覚を脳が感じるのです。

 さて、水がしみる場合、原因が歯にある場合と歯肉にある場合とに大きく分けられます。
 前者の場合、まず第一にむし歯による痛みが挙げられます。
 そのほか、歯の根元が削れて痛みを感じることがあります。
 これは「くさび状欠損」といいますが、食いしばりにより歯の根元に応力が集中し削れていく場合と、荒い研磨剤の入った歯磨き剤と毛先の硬い歯ブラシで削れていく場合、そして両方が起こっている場合があります。
 これらの症状を抑えるには、充填(つめること)等の処置が必要です。
 さらに、むし歯や削れているという状態(実質欠損)ではなくても、歯の根の一部が露出してしみる場合があり、象牙質知覚過敏とよばれます。この症状に対しては、歯の表面をシールすることで対応します。
 さて後者の歯肉に原因がある場合ですが、歯肉や歯根膜(歯を取り囲む薄い膜)に炎症が起こると、歯と歯肉の間に空間ができます。ちょうどパッキンがへたったような状態と似ています。するとこの部分に水や空気が入り、先ほどの象牙質知覚過敏を起こします。これには、シールと同時に、歯肉等の炎症を抑える必要があります。
 その他、腫れていた歯肉が引き締まる時、一時的にしみることがあります。
 以上、歯がしみるという症状に対しては、対症療法で対応できますが、原因を取り除かなくては再発します(痛みが強い場合、ときには歯髄を除去しなくてはならないこともあります)。

 むし歯に対しては、ブラッシングや食生活の見直しが必要です。
 食いしばりがある場合は、気づいたら肩の力を抜く(生活習慣の改善)、食いしばり防止用のマウスピースを装着するといった対応が考えられます。
 知覚過敏に対しては、ブラシを毛先の柔らかいものに替える、研磨剤の含有されていないペーストにする、フッ素の入ったペーストを使用する、ブラッシング時に力を入れない、ストロークを小さくする等の対策が必要です。
 歯肉の炎症に対しては、ブラッシングの改善と歯周病の処置、そしてなにより食生活の見直しが重要です。

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