「何を食べるか、どう食べるか」歯科医の視点から

2014年3月



 最初に、栄養学の専門家ではないことをお断りしておきます。
 基本的に、食物にはそれ自体がもつ熱量=カロリーがあります。
 食物の潜在的エネルギーと考えてよいかと思います。
 これは、製品となっているものでは、食品成分表示に、たとえば100g当たり○○kcal(キロカロリー)と具体的に表示されています。
 その他、栄養成分として、炭水化物、タンパク質、脂肪、ビタミン、カルシウム等が100g当たり○○mgあるいは○○gと表示されています。
 しかし、同じ食物を同じ量食べても、ひとによりそこから吸収できる熱量は異なります。
 また、同じひとであっても、そのときの肉体的、精神的な健康状態により消化機能は変化し、吸収できる熱量、そして栄養成分は違ってきます。
 これまでは、どちらかというと栄養成分を重視した食事指導、つまり「何をどれだけ食べるか」が中心でした。
 生活習慣病の多くが食生活の偏りに起因している以上、こういった指導の重要性は変わることはありません。
 しかし、先程述べたように、食物の吸収のされ方がときどきの健康状態により大きく左右される以上、「どう食べるか」も同時に考えなくてはなりません。
 (これには食物の調理方法も入るかもしれません。)
 一例として、
 「朝の果物は金、昼は銀、夜は鉛」といわれます。
 果物には、ビタミンやミネラルといった大事な栄養素が含まれています。そのなかの糖分は、身体が活発に活動する際には早期に代謝されエネルギーに変わります。マラソン選手がレースの途中で糖分の多いスポーツドリンクを飲むのもそのためです(ちなみに代謝は炭水化物、タンパク質、脂肪の順に遅くなります)。
 一方で夜果物を摂取した場合、その後の身体は休息のモードになりますから、エネルギーにならずに貯蓄に回り、脂肪に変換されやすくなり、限度を超えると肥満や高脂血症、動脈硬化等の生活習慣病の原因となります。甘い物も同様です。
 また、夜から睡眠時は唾液の分泌量が減るため、完璧なブラッシング(実はなかなか難しいのです)をしないとプラークが付着しやすくなり、むし歯や歯周病の原因ともなります。
 日中は唾液の抗菌作用、緩衝作用、清浄作用のおかげで、これらを防ぐことができます。
 また、消化管の機能は自律神経によってコントロールされています。自律神経のうち交感神経は、主に身体が活動したりトラブルに対応したりするのに適した状態を作り、一方の副交感神経は、身体を休息させたりエネルギーを貯蓄するのに適した状態を作ります。
 食物の消化吸収は副交感神経の働きで活発になり、交感神経で抑制されます。
 ですから、過激なテレビを見たり、悩み事をしながら食事をすると、交感神経の作用で十分な消化吸収ができないばかりか、時には消化液のバランスが崩れ病気を引き起こすことにもなるのです。
 最近は唾液の力が注目されています。
 消化以外でも、抗菌免疫作用、清浄作用、粘膜の保護作用、内分泌作用等、身体にとって多くの有益な作用があります。
 食物もただ摂取すればいいのではなく、唾液とよく混ざった状態で取り込むことがとても重要なのです。
 
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