歯周病と心臓血管疾患

2012年2月



 昨年の院内だよりで、歯周病と糖尿病の関係について述べました。
 今回は、歯周病と心臓血管疾患との関係について触れてみたいと思います。

 実は、歯周病の人はそうでない人に比べて、心筋梗塞などの心臓血管疾患にかかる確率が高いといわれています。
 最近重視されている心臓血管疾患としては、脳梗塞、心臓冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)、動脈硬化症などの原因となるアテローム血栓症等が挙げられます。
 アテロームとは、おかゆ状の脂肪性の沈着物をさしますが、これが心臓から脳につながる大動脈や、大脳の中心を流れる中大脳動脈など、比較的太い動脈で血栓症を起こしやすいといわれています。
 アテローム血栓症は、かつては欧米に多く,日本には少ないと言われていましたが、生活習慣や食生活の変化とともに、最近では日本でも増加傾向にあります
 このアテローム血栓を作る原因としては、血管の損傷、喫煙、高コレステロール血症そして歯周病のような細菌感染等があげられます。
 歯周病原菌(歯周病を起こす原因と考えられる細菌)から出される内毒素は歯周ポケット内部から血管に侵入し、そこで炎症を引き起こすため、血栓がつくられるのです。
 もちろん血管に入った歯周病菌の大部分は白血球によって退治されます。
 ところが一部の歯周病菌は白血球から逃れられる性質を持っているのです。その性質とは、なんと血小板に入り込むというものです。しかも歯周病菌が血管の中に入り込むと、血小板は異常を起こし互いに集まり固まりやすくなるのです。つまり歯周病菌が入ることで血小板は簡単に血栓を作ってしまうのです。
 以上のような過程でつくられた血栓が運ばれて脳硬塞や心筋梗塞を引き起こす可能性が考えられています。
 最近では、重度の歯周病患者とそうでない人を比べると、前者は冠動脈疾患を引き起こす可能性が2倍程高いといわれています。
 長年歯周病を放置すると、この歯周病菌が入り込んだ血小板が体内で増加し全身の血管をめぐり、最後に流れ着いた場所が脳血管であれば脳梗塞、心臓であれば狭心症や心筋梗塞を引き起こします。さらに、長年の生活習慣等から動脈硬化が起こっていた場所では、特にこの血栓が作られやすくなっているのです。
 歯周病も生活習慣病ですが、糖尿病同様、心臓血管疾患もやはり生活習慣病の仲間です。
 生活習慣の歪みが様々な生活習慣病を引き起こし、それらの生活習慣病がまた相互に「負」の影響をし合っているんですね。
 生活習慣、特に食生活習慣は重要で、何でも手に入る、いや口に入る現代だからこそ、嗜好に任せるだけでなく、きちんとした知識と意識をもって食事に臨む姿勢も大切ですね。

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