歯周病のメインテナンス(管理)について

2010年12月



 当医院で歯周病のメインテナンスシステムが定着してから、5、6年が経過しました。
 1日に来院される方は40〜45名ですが、そのうち30〜35名の方はこのメインテナンスのためにお越しいただいています。
 以前に比べると歯を削ることがずいぶん減ったと感じますが、それだけ必要な処置に集中できますから、結果的にとてもよい傾向だと思います。また、診療室に響くタービンのあのキーンという音を聞く機会も少なくなり、環境としても改善されたのではないでしょうか。

 さて、歯周病のメインテナンスに通院する方には、大きく分けて3つの動機があります。
1.現在歯周病があり、その悪化を食い止めるため
2.かつて歯周病があったが、処置により状態は改善している。でも再発を予防するため。
3.歯周病はほとんどないか、あっても軽度。でも予防のため。
 かつては1.と2.の方がほとんどでしたが、最近では3.の方が徐々に増えてきています。
 3ヶ月に一度の通院という方のなかには、私たちが日常の口腔ケアの仕方を教えていただきたい程、健康的な口腔の状態の方もいらっしゃいます。
 現在歯周病のある方が通院するのはもちろんですが、歯周病は一旦改善しても、何かのきっかけで再発することがよくあります。

 私たちは歯周病に対して、こう考えています。
 まず、歯をとり囲み支える組織を歯周組織といいます。
 歯周組織には、歯肉、歯槽骨、歯根膜、そしてセメント質がありますが、通常は歯肉しか見ることはできません。
 歯と歯肉の間の溝が炎症により深くなったものを歯周ポケットといいます。
 歯周ポケットが深くなった状態では多くの場合、歯を支える歯槽骨も吸収(退縮)して下がっています。炎症が起こっている場合の歯肉は赤く(発赤)柔らかくなっていますが、これは血管の透過性が上がったり、うっ血しているためで、いわば、細菌と歯周組織との戦争状態なのです。柔らかい歯肉では、歯周ポケットの締まりが悪く、細菌が容易に侵入してしまいます。
 一方で、炎症がなくなると歯肉は引き締まり弾力性に富んだ硬さになりますが、この状態になると細菌はポケット内にはそう簡単に侵入することはできません。歯肉が歯をしっかり包み、ちょうど弾力性に富んだゴムのパッキンの役目を果たしているのです。
 歯周病が完全になくなれば理想的ですが、残念ながら現実にはなかなかそういう状態にはなりません。
 ゴムのパッキンの状態を維持しつつ、細菌が侵入できない環境を築ければ、歯周病が急激に進行する可能性はそう高くはありません。
 もちろん、体調がそこに及ぼす影響は決して少なくありません。
 口の中は、体調が最も現れる所です。疲れている、睡眠不足が続いているといった状態になると、体の抵抗力は急激に低下します。口の中には無数の細菌が常在していますが、健康な場合には、口の中の組織と細菌は問題のない共存状態を維持しています。
 ところが体の抵抗力が低下すると、細菌との共存というバランスが崩れ、細菌が原因と考えられるいろんな症状が現れます。口内炎ができる、歯が浮く、いつも通りのブラッシングが痛い、出血する、水がしみるといった症状は、この抵抗力の低下と密接に関係しています。
 細菌に対し体(組織)が劣勢にある状態です。
 逆の言い方をすると、体調が芳しくないのに口の中に全く異常を感じないとすれば、歯周病とは無縁なのかもしれません。
 もともと深い歯周ポケットがあると、体調がすぐれないなどのマイナス因子が原因となって、歯肉のパッキンが痛む可能性があります。この場合には細菌のポケット内への侵入や増殖により、歯周病は容易に再発します。
 その備えとして定期的にポケット内もしくはその周囲のプラーク等を除去し、歯周病が再発しにくい環境づくりをする、それが歯周病のメインテナンスなのです。
 健康な歯肉のパッキンを維持し、快適な食生活を楽しみましょう。

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