歯周病と出血、そして痛み

2010年4月



 現在青葉歯科では、歯の痛みや急なトラブルで来院される方は比較的少なく、歯列矯正や歯周病の管理のために来院される方々が圧倒的多数になりました。
 ところで歯周病の検査で、「○mm」ということがありますね。
 これは歯周ポケットの深さを測っているのですが、以前は2mmまでが正常で(この場合は正確にはポケットと呼ばず、生理的歯肉溝=サルカスといいます)、3mm以上は病的な状態とされていました。
 当医院では当初より、3mmまでを正常としてきました。
 それは、ポケットの深さが3mmでも症状などの問題のない人が多く、またこの程度であればポケット内のブラッシングも比較的容易だからです。つまりご自分で管理しやすいということです。
 もちろん、ポケットの深さだけでなく、出血があるかどうか、歯の揺れがあるかどうか、ということも歯周病検査の際に加味されなくてはなりません。
 最近では、深さよりむしろ、出血の有無の方が歯周病の進行状態を正確に表しているといわれています。
 ポケットは浅いにこしたことはありませんが、要は、ポケットがたとえ深くても歯肉が歯に密着していれば、そこには細菌が繁殖するスペースはないということです。
 では、プロービング(専用の器具=プローブで深さを測ること)で軽く触れただけでポケットから出血が起きる場合、また痛みを感じる場合は何が問題なのでしょうか。
 これは少なからず炎症が起きていることの証拠なのです。
 細菌や細菌の出す酵素や毒素によってある程度以上の炎症が起こると、バリアの役目をしている歯肉の表面=表皮が壊され、さらに細菌が内部に侵入しやすくなります。
 また同時に、バリアを失った歯肉の組織が細菌と戦うために、その部分の毛細血管へ血液(白血球等の免疫細胞を含む)をたくさん送ろうとします。結果として、歯肉の表皮近くに血液が滞りやすくなり(うっ血)、普段のブラッシングによる刺激で容易に出血したり、起炎物質(炎症症状を起こす物質)により痛みを感じたりします。
 ところが例外として、喫煙者では明らかに歯周病にもかかわらず出血や痛みといった症状が現れないことがあります。これはニコチンの作用で歯肉の毛細血管が収縮(圧迫)され、慢性の血液不足の状態に落ち入るからです。つまり、炎症がないから出血しないのではなく、細菌がいてもそれと戦うだけの態勢になっていないということなのです。
 また、痛みも歯周病の重要な症状です。
 炎症により、発痛物質(ヒスタミン、カプサイシン等)が放出されるために人は「痛み」を感じます。これにより、人は炎症の存在や位置、状態を知り(侵害受容反応)、その対応行動(生体防衛行動)をとろうとします。が、一方で痛みのためにその部位に触れられず、炎症が悪化する場合もあります。
 この場合、痛くない程度のブラッシング圧でブラッシングすることが重要です。痛みを我慢してのブラッシングは、かえって炎症の部位を傷つけ、治癒を遅らせる可能性があるからです。痛みは正直です。
 このブラッシングでは十分な汚れの除去はできませんが、それは来院時に、こちらのほうで清掃、消毒しますから、ご安心ください。
 来院の間隔は、この炎症の状態によって長くしたり短くしたり調整しています。
 当医院では、ポケット内、および周辺の汚れ=プラークや歯石を取り除いた後(デブライドメントといいます)、深いポケットや明らかに炎症のある歯肉に対し、4ppmのオゾン水で洗浄しています。10秒程でかなりの除菌が可能です。
 ただし残念ながら、オゾン水の殺菌効果は短く、数時間で単なる水になってしまうため、皆さんにお渡しすることができません。
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