スタッフの退職から学んだこと


 スタッフが定着し医院としての力量が安定していることは、歯科医師であり、同時に経営者である院長にとって、何よりもありがたいことです。これはとりもなおさず患者さんによりよい医療というサービスを提供するための必要条件でもあります。
 逆に、スタッフが定着しない、内部の人間関係がぎくしゃくしているといった状況では質の高い診療はできませんし、何よりも雰囲気のぎこちなさは患者さんが敏感に察知し、不安感や不信感を抱きます。たとえ診療内容が同じであっても、信頼関係が不十分な中では心の満足を得ることはできません。
 今年の春青葉歯科は、たまたま二人のスタッフが退職し、一人の新しいスタッフを迎えることになりました。スタッフの就業年数が比較的長い当医院ではこんな目まぐるしいスタッフの交代は初めてです。
 ここでいろんなことを学び、スタッフのありがたさとスタッフを作り上げていく大切さ、そして難しさを実感しました。
 何年も一緒に仕事をしているスタッフとの間では、阿吽(あうん)の呼吸というものができ、お互いに何をしようとしているか、何が必要かといったことが指示なしに伝わる場合が多くなります。これは仕事をする上でとても助かることで、スムーズな共同作業は快感さえ覚えます。
 一方でこの「呼吸」を過信し過ぎると、ややもすると互いに「・・・してくれるはずだ」という慣れや甘えの温床ともなりうるわけです。すると、言葉や態度で確認するという、医療の場(他の職場でも同じだと思いますが)で最も大切なプロセスを省略し、ある日とんでもない事態につながる危険性をはらんでしまいます。事実、そういったこともありました。昨今問題となっている医療ミスの多くは、多忙を極める環境下の、こういった慣れや甘えに起因していると考えられます。
 さて、新人には当然のことながら、この阿吽の呼吸が伝わりませんから、これらを逐一説明指導しなくてはなりません。歯科衛生士という資格はもっていても、個々の医療現場のシステムを修得するまでは、即戦力(医療の場ではふさわしくない表現かもしれませんが)とはなりません。
 もちろん歯科医療の基本は知っていますから、システムさえ身につければ急速に力量はアップするはずです。素直な人柄は、この時最大の武器(これも不適当な表現?)になります。
 指導していく中で、新人はこうやって青葉歯科のスタッフになっていくのかということを不思議と実感できるのです。
 新人を迎え入れたスタッフにも頭が下がりました。
 自分の仕事をしながら新人の指導もするわけですから、一定期間は診療全体としての能率は落ちます。そんな中、お互いにカバーし合ったり、時間の都合をつけたり、また就業時間をオーバーしてまで診療を手伝ってくれるスタッフには感謝感謝です。こんなスタッフは私にとってかけがえのない存在です。
 これまでも忙しいはずだったのに、その1.5倍の仕事をしてしまうのです。
 十分な人的力量が確保された状況下では、このことには気づかなかったでしょう。私は、十分なスタッフがいる環境に対する慣れや甘えがあったと反省しました。
 新人を指導する際には、それぞれの作業プロセスを再確認する必要がありますから、青葉歯科にとっても、ルーチンで行なってきたことの客観的評価にもつながり、これはこれで大変有意義なことなのです。自らの問題点に気づくこともあります。
 人は健康なとき、そのありがたさに気づきにくいものです。
 「一病息災」 「ピンチをチャンスに」
 神様が与えてくれた大きなご褒美ではないでしょうか。
 私はこのご褒美を素直に受け取りたいと思います。

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