ポケットの管理


 ポケットの管理と聞いて、皆さんは何を連想しますか?
ポケットに入れっぱなしにしている物を整理するとか、ポケットに入っている小銭の金額を把握するとか、そんなことを思い浮かべるのではないでしょうか。歯科ではポケットというと、歯周ポケット、つまり歯と歯ぐきの境目の溝が病的に深くなったものをいいます(通常、正常な溝もポケットという傾向がありますが、正確には生理的歯肉溝=サルカスといいます)。ちょうど衣服のポケットのように袋状の溝のようになっているからでしょう。では、サルカスとポケットとはどう違い、ポケットにはどんな問題があるのでしょうか。
 通常、サルカスは2mm以内のものをさし、それ以上深いものを歯周ポケットといいます。歯周ポケットとは、歯周組織つまり歯を取り囲み、歯を支えている組織が、炎症により歯の支持機能を失った結果、歯との間にできた隙間をさします。歯周ポケットが問題となるのは、歯の支持を失ったということの他に、深い隙間が不潔になりやすいためです。つまり、深いポケットの深部は歯ブラシが到達しにくいため、常に細菌をはじめとする汚れ(炎症を引き起こす原因になるため、起炎物質といわれます)が停滞しやすい場所となります。「一生懸命ブラッシングをしているのに歯周病が治らない」という悩みをよく耳にしますが、それはポケットに入り口は清掃できても、ポケットの底までブラシの先端が届かず、したがって起炎物質が十分除去できないためです。私は、ポケットの入り口から3mmまではブラシは届くと考えています。したがって、3mm以上のものをポケットとして問題視しています。
「ポケットの深さを3mm以内に保つ」これが歯周組織の健康を維持するひとつの目安とお考えください。深さ4mmのポケットは明らかに炎症がある証拠です。しかしこの程度のポケットは、炎症により歯肉が腫れた結果、ポケットが相対的に深くなった場合が多く、歯石を除去し適確なブラッシングができれば、すぐに3mmにもどることができます。4mm前後のポケットを3mm以内にもどすこと、これはそれほど難しいことではありません。しかし、5mmから6mm以上の深さがあると、御自分だけでポケットの内部を管理することはほとんど不可能です。
 人それぞれ口の中の状態は異なります。歯肉の薄い人もいれば厚い人もいます。御自分の歯肉の弱点部分を知り、そこをとりわけ注意してブラッシングすることが大切です。ポケットは知らず知らずに深くなっていくものですから、御自分の口は健康だと思っている方でも、半年から1年に一度はポケットの診査をしてもらうことをお薦めします。また深いポケットは、定期的な管理をしないと炎症の進行を止めることはできません。目安として、急性の炎症がなくなった場合でも、4mm程度のポケットのある方では3ヶ月に一度、それ以上の場合は1ヶ月に一度のチェックとクリーニングを薦めています。
03.07
このページを閉じる

Copyright 2004 Aoba Dental Clinic All Rights Reserved.