ストレスは歯の大敵


 甘い物に含まれる糖分がむし歯や歯周病の原因であることは、今や常識になっています。では、ストレスがむし歯や歯周病を作りやすくするということをご存じでしょうか?
 ストレスを多く感じる子供ほどむし歯が多い傾向があるということが、最近の調査でわかってきました。 エッ ウソッ! いえ、本当です。これは、唾液の分泌と深くかかわっています。唾液の分泌を促進するのが副交感神経であり、抑制するのが交感神経です。
 ここでまず、交感神経と副交感神経についてお話します。
 交感神経は、いわば体を臨戦体制にする神経といえます。神経を集中させる時、興奮した時、苦痛を感じた時等、つまりストレスを感じているときに働くのが交換神経といえます。ストレスに対し、体が全力を出し切るために働く神経ですから、いざという時には非常に重要な働きをします。この神経が作用すると、心拍数や血圧が上昇し、発汗が促進される反面、唾液の分泌や消化器系の機能が低下します。つまり、脳や心臓等、ストレスに立ち向かうのに最重要な部分のみに効率よくエネルギーを集約すべく作用するわけです。その分、体は消耗します。
 一方副交感神経は、体をリラックスさせたり、休ませる時に働きます。交感神経とは反対に、心拍数や血圧は低下し、発汗も抑制されますが、唾液の分泌や消化器系の機能は逆に活発になります。つまり、体がくつろいだ状態になり、栄養の吸収が高まり、エネルギーを使わず、むしろエネルギーを蓄える体制になるわけです。
 交感神経が働いている状態を有事とすれば、副交感神経が働いている状態は平時といえるでしょう。いざという時の備えは必要ですが、本来有事とは滅多にあることではないのです。しかし、私たちの祖先の頃と違って、現代社会はストレスがあまりに多く、相対的に交感神経が興奮している割合が増えるため、神経は高ぶり、唾液の分泌や消化器系の機能が低下し、体力や神経を消耗しがちになります。
 唾液の分泌が低下すると、その洗浄作用や抗菌作用が十分発揮されず、食べ物の残りがいつまでも口の中にあり、細菌が高密度の凝集しやすいという、口の中が細菌の増殖に適した環境になってしまいます。これで、ストレスがむし歯や歯周病と深くかかわっていることがおわかりいただけたと思います。

 食事に対する注意やブラッシングと同様、いかにストレスの少ない生活をするかが、お口の健康作りの鍵を握っています。

 ちなみに、唾液とストレスに関しては、最近出版した拙著「真の健康を求めて」に詳しく記載されていますので、関心のある方はぜひご一読ください。
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