西洋医学の限界


明治維新以来、わが国は西洋の文化や学問技術を、自らの先をゆく進んだものとして熱心に取り入れてきました。
 それらを自分たちが消化しやすい形にして吸収した結果、今の日本があるといっても過言ではないでしょう。私たちは「西洋の輸入」により、たくさんの恩恵を受けてきました。
 西洋医学もその一つと言えましょう。
 しかし、そのことによる弊害も最近問題になってきました。
 つまり、それらを金科玉条のごとくとらえ、東洋的なもののとらえ方を「遅れた思想」として否定してしまったことです。
 医療の領域でも、西洋医学ではどうしても解決できないものがあること、つまり西洋医学の限界が感じられるようになってきました。
 MRSA=黄色ブドウ球菌による院内感染、O-157=病原性大腸菌による集団感染などがその例です。
 ある特定の細菌のみが異常増殖したことによる日和見感染、抗生物質が効かないいわゆる耐性菌の出現等がこれらの原因です。
 現在、すべての病原菌に効く抗生物質というものは存在しません。
 抗生物質の服用を続けると、ある種の細菌が死滅します。
 すると、この細菌と共生関係にあった他の細菌同士のバランスが崩れ、それらの細菌が急激に増殖し、新たに別の感染症を引き起こすことがあります。これを日和見感染といいます。
 また、同様に抗生物質の服用により、それが対象としていた細菌のほとんどが死滅しますが、ごくまれに突然変異等で同じ細菌でありながらその抗生物質が効かないもの(耐性菌)が存在し、その耐性菌だけが生存してしまいます。すると、他の細菌は減少していますから、この耐性菌の増殖に都合のいい環境が整ってしまいます。こうして増殖を続けた耐性菌にはかつての抗生物質は全く効果はありません。
 これをくり返していくと、極端な言い方をすると、地球上には耐性菌ばかりが残ってしまいます。
 西洋的な発想は、起こった事象の原因を究明し、この原因を取り除くという手法を用います。
 かつてヨーロッパで衛生状態の不備による感染症が流行した時、下水道の整備をし病いを沈静化した歴史がありますが、これは西洋的発想が効を奏したいい例といえます。
 抗生物質も、原因菌をつきとめ、これを撲滅するという手法に基づいています。
 しかし、先にもふれたように、原因菌という特定の生物を除去したために、自然界、生体内のバランスを壊し、新たな病原菌や疾病の発生をもたらすという、いわば副作用を起こす危険性が大なのです。
 東洋医学では、原因よりも症状から疾病をとらえ、それを改善すべく生体の機能を改善していくという手法をとります。
 例えば細菌による感染症にかかったら、その感染やそれによる症状を押さえるような身体の機能を強化して疾病からの回復をはかります。
 最近とみに生活習慣病がクローズアップされてきました。
 長い間の生活習慣の歪みが蓄積し、身体の許容量を越えた時、疾病となって健康を蝕むものをいいます。
 糖尿病や、高脂血症、肥満、心臓病などの多くは生活習慣病といえるものです。
 喫煙についても最近かなり問題視されていますが、生活習慣病の原因として重要です。
 歯科では、歯周病になった場合、喫煙者や糖尿病罹患者では組織の抵抗力が低下しているため、回復が遅れ、疾病の進行が早まる傾向があります。
 この原因菌は、だれに口の中にも存在する細菌です。この細菌の質や量と生体の抵抗力とのバランスが崩れた時、歯周病は発症、進行するのです。
 次回は、これらの細菌との上手な共存のしかたについてふれようと思います。
西洋と東洋の考え方をうまく取り入れて、健康を維持したいものです。
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