食事と水


 いつからか、食事中に頻繁に水を飲む子供が増えてきたような気がします。
 かく言う我が家でも御多分にもれず、末っ子(小5)は水を持ってきて傍らにおいて食事をしています。
 あまりに目にあまる時はやはり注意をします。
 なぜ食事中の水が問題なのか、考えてみましょう。

 映画の中では、フランス料理を始め、いわゆる洋食のコースでは、水を飲みながらの食事の光景を見かけますが、一般的な家庭料理では実際のところどうなんでしょうか。スープやポタージュ類が水分の主な摂取源ではないでしょうか。
 私がかつて社会人になる前にイギリスとフランスの格安ホテルに宿泊した時には、朝食にジュースは出たものの、水は出なかったように思います。日本と違い、水はただという感覚はありませんから、そのへんの事情もあるかもしれません。
 さて、和食ではもともと食事中に水は出ません。
 味噌汁がその代わりとも言えるのですが、これとてあまりおかわりをすることは作法の上でもほめられたことではありません。おそらく、「食べ物を水で流し込む」ことは食事を大切にとらえていない、つまり食事に対する感謝の気持ちが欠落しているとみなされるからではないでしょうか。
 これは作法上の問題ですが、一方で「親が死んでも食休み」という諺もあります。身体のためにも、食休みも含め、食事はゆっくりと余裕をもってすべきだということでしょう。
 ゆっくりと時間に余裕をもってとる食事は、咀嚼(そしゃく=かむこと)も十分に行われますから、唾液の分泌も活発になり、消化吸収がいいのは当然ですね。
 一方、急いで食べる食事、咀嚼の不十分な食事、考え事をしながらの食事では唾液の分泌が不十分となります。唾液はかむことにより唾液腺が刺激を受け分泌が促されます。また、この分泌は自律神経の中の副交感神経の作用で行われますから、考え事をしていたり落ち込んでいる時は自律神経で逆の働きをする交感神経の活動が活発になり、その結果分泌は低下します。
 唾液は消化酵素の働きもしますが、潤滑剤の働きもあり、口の中の食べ物が唾液と十分に混ざり合わないと、嚥下(えんげ=飲み込むこと)しにくく、それを補うために水を飲むと考えられます。
 今の時代、時には忙しい食事もやむを得ないでしょう。
 ただ、柔らかい食事、水で流し込む食事、かまない食事形態等、これらが習慣化してしまうと問題で、長い間にはかなり健康への影響が出てくるはずです。
 また、以前にも触れましたが、水は胃での停滞時間が極端に短く、すぐに腸に送られてしまいますから、多量の水といっしょにとった食物は、下痢や食中毒をを起こしやすくなります。

 習慣はすぐにはやめられません。
 まずは、コップに入れる水の量を少しずつ減らしてみましょう。
 そしてなにより、ゆったりとくつろいだ食事にするよう、工夫してみましょう。
 水がいらなくなった時、気づいてみるととても楽しい食事をしているかもしれません。

このページを閉じる

Copyright 2004 Aoba Dental Clinic All Rights Reserved.